ソーツ・オン・ゲンパツ

なんか格好いいタイトルになってしまいましたけど、なかなかふさわしいタイトルが思い浮かばず、以前ジョブズ氏がフラッシュについての考えをまとめた文章のタイトル(ソーツ・オン・フラッシュ)をぱくって付けただけなのです

そして文章自体は実は先週Facebookで公開したのですが、Facebookは一応リアル知り合いオンリー向けなので、ここでも公開させていただきたいと思います

さて前置きはここまで、以下本文です

叩かれる覚悟をして敢えて言いますが自分は原発推進派です

そりゃ放射線やらなんやら色々騒ぐのも理解できますが、クリーンエネルギーとかグリーンエネルギーとか、理想的すぎて実現するのはとても難しいです;例えば以前にも申し上げたとおり、風力発電は鳥類の天敵であり騒音問題も無視してはなりません;太陽光発電も効率云々言う前に、まず大量の土地を必要とするのがとても痛いし、糞や積雪問題も大きいです;さらに言えばこれらの自然エネルギーの不可避な弱点は天候に左右されてしまう点で、これは自治体や国のような電力の安定供給を必要とする規模にもなるととても使えないのです(もちろん作れる分だけ作って送るのはいいですが、需要の半分すらこのような自然エネルギーに任せるのは不可能です)
それにさらに言えば完全に「クリーン」なエネルギーは存在しませんし、確実に安全な発電方法も存在しません

そもそもこの世にいるだけで我々は様々なリスクと闘いながら生きて行くのです:喫煙者は肺癌になったり、歩行者は自動車事故に巻き込まれたり、飛行機に乗るとジャックされたり、家で大人しくしていても突然地震が来たり、リスクは常に我々の身近に存在するのです
一つ例を挙げましょう、「工学倫理」の授業で有名な例でございます。昔フォード社が「ピント」という名前のコンパクトカーを売り出しました。その車には一つの欠陥があり、後部に追突された場合、ガソリンタンクもその近くにあるため炎上、爆発する可能性が他の車より大きいです;この問題を解決するためには、タンクにゴムシートを追加したりする必要があり、そのための費用が1台あたり11ドルが必要でした。
そこで、フォード社の安全担当取締役はこのような試算を挙げました:
  (改善費用)販売台数1250万台×単位費用11$=約178億円
  (社会的利益)死傷者の出る火災180件×(死亡による損失20万$/件+負傷による損失67千$/件)+車両炎上2100台×車両損失700$=約64億円
つまり、改善にかける費用は、改善しないまま自社に持たされた損失よりも上回った結果となります、これを受け、フォード社は改善しないまま販売し続けるの決断を下りました。

しかしもちろん話はそう単純にはいきません、その後製造者責任訴訟が起き、フォード社は多額な賠償金を支払うことになりました(詳しく知りたい人は「フォード ピント」と検索すれば良いのでしょう)

ここでフォード社の問題はなんでしょうか?安全性に欠けていることを知っているにもかかわらず販売し続けたことなのでしょうか?残念ながらそれも一つの問題ですが一番大事な問題ではなく、一番の問題はその試算自体:人の命を単純にお金で計算することです

安全な車はどのエンジニアでもプライドを賭けて作りたいのですが、果たして「安全」とは何なんでしょうか?事故を起こしても人は死なないことなのでしょうか?それだけなら話はとても単純で、乗用車ではなく、防弾車や装甲車を作ればいいのではないでしょうか?しかし現実では殆どの人はそのような車を買わないのです。我々消費者は常に、リスクがあることを知りつつ、買い物などをするのです。それは安全性だけでなく、コストも考慮しているからです:防弾車はたしかに安全性が高いが値段も跳ね上がりますので、向上された安全性と高くなった値段と吊り合わないのです

もう一度考えていただきたい:安全とは何なんですか?
絶対的な安全はこの世にまず存在しないのです。我々は常に安全性とコスト、そしてもちろん他の要素を考慮し、バランスをとっているのです

安全な発電方法も最初から存在しません、火力なら爆発なり、水力なら水没なり、そしてもちろん原発なら放射線なりのリスクがあります;さらに言えば漏れた放射線はとても制御しにくく、人々に被害をもたらしています。が、他の発電方法なら確実に安全なのでしょうか?風力発電はもちろん騒音問題や鳥類に関する問題、太陽光発電はソーラーパネルの材料を入手するためにたくさんの出稼ぎ労働者が不健康な環境で働き、場合によって死人も出る問題(ソーラーパネルの材料自体はシリコンなのでどこでも開採できますが、コストの問題上人件費の低い国から輸入するのが主流であって、そのため実質中国などからの輸入がメジャーですが、中国などの途上国では人件費が安い代わり、安全対策が不十分だったり、結果としてはソーラーパネルを作るためにたくさんの人が病気にかかったり死んだりするのも残念ながら当たり前です)、それらはすべて無視してはいけない問題なのです

だから、安全な発電方法はそもそも存在しないから、安全性を高めること自体こそが大事な問題です。が、前のピントの問題と同じように、「安全性を高める」ことはズバリ言えば「コストを高める」ことです。
今まで使われてきた火力や水力、そして自然エネルギーとして期待されている太陽光や風力、これらの問題点は天候に左右されてしまい、安定した発電ができないだけでなく、大規模な発電もできない、ということです。となるとあたり前のことですが、大規模な発電ができる原発よりも利益をたくさん生み出すことができません。つまり、安全対策に使えるお金も少なくなって当然です。実際原発はとても高い耐震基準にクリアしていますが、利益の少ない自然エネルギー発電所にとってそれはとても難しいことです
実際、今回の大震災で問題となった福島第一原子力発電所は、設計上の耐震基準はマグニチュード7.0にもかかわらず、9.0の地震が来ても問題なく発電停止できました(もちろん震源地は原発の直下ではないため、実際原発に到達した地震は震源地ほど大きくありませんが、それでも十分大きな震度でした)。実際問題となったのは、発電停止後、外部電源で反応炉を冷却しなければなりませんが、津波は外部電源のディーゼル発電機を潰してしまい、さらに最後の万一に備えた電池は8時間しか稼働できず、この8時間に別の外部電源を調達できなかったことです。これによって冷却炉の反応が止まらず、最後メルトダウンにいたってしまいました。

しかし、今回の地震でもうひとつ被災地に位置されていますが、全く問題が起きなかったどころか、地震の時の避難場所としても十分機能した原発があります。言うまでもなく、それは女川原子力発電所でした。

福島第一の事故を受け、脱原発などの声が高まっていますが、その気持ちは十分に理解できます。が、脱原発は目的ではありません、ある程度の安全基準を達成できない発電所を排除することこそが目的です。この点で言えば、女川のようなこんな大震災にも負けず、発電所だけでなく避難場所としても活躍(が、誰もがその活躍を忘れてしまったようで…)できる多くの原子力発電所は、他の採算上高基準の安全対策を取りにくい発電所よりも優れているのではありませんか?

Author: 星野恵瑠

Mac user, Niji-Ota, Chinese, Now working in Japan at MAGES. Inc., Future's aim is that one day my name can be listed in Wikipedia

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